開発者の話

開発者の話

素材を嘘のない形へ。

様々な家具を見て使ってきましたが、家具の美しさは、作り手がいかに素材を理解して形にするかどうかに尽きるのではないでしょうか。素材を理解して、素材の持つ特性とその素材による一番合理的な形を極める。それが嘘のない形であって、美しさに繋がると思います。今回、トライウォールで家具を作るにあたって自分で切ったり曲げたりしましたが、とにかく丈夫で大変でした。どうやったら壊れるんだろうと試行して、切っては折り曲げ、何度も繰り返したのです。そのうえでデザインや設計を考えられたことは私にとってとても重要でした。デザインはただ形を作ることではなく、自分の思想を込めていく行為ですから。

“ 場” に大切なもの。

私たちは仕事で、山奥にある古民家を改築することがあります。どんな田舎の家屋でも、そこには畳があって、床の間があって、背筋がしゃんとするような品格が備わっているものです。素材の匂いがして、木の感触がある。Danbaul×Style は道具やビスなしで組み立てられることで簡単に“場”を作ることが出来ますが、どんな“場”でも、品格は必要です。そこで過ごす人の気持ちに、必ず影響を与えます。また、昔の家を見ると古さではなく、逆に未来を感じます。自然に対して負荷のない形になっていて、学ぶことが非常に多い。社会はますます変化して、暮らし方や家のあり方も自由に選べるようになってきているからこそ、いかに負荷をかけずに生きていく術を見つけられるか。これは、建築家として突きつけられているお題でもあり、社会的なテーマだと思います。

紙の持つ可能性。

例えばオリンピックの選手村に置いて、使った選手がサインをしたら、これはただの紙ではなくなります。永遠に使えるものではないからこそ、新しい価値を生みだせたら面白いのではないでしょうか。また、ものを買って使うという感覚ではなく、借りた資源を形にして自分たちの生活の中で使い、使わなくなったらまた資源に戻す。そんな循環型のひとつの見本として、変化していく世の中で自分たちの暮らしや家具のあり方を考えるきっかけに繋がれば嬉しいです。そしてDanbaul×Style は本当に多くの人の協力を得て、開発に辿り着いた商品です。まさに地域の協力や熱量の賜物であり、その製造販売をトライウォールによる棺桶エコフィンを手がけるWillife さんにお願い出来たことは大変心強い。トライウォールに精通しているため、製品に対する理解が違います。こうした地域や人との繋がりも含め、今後の展開が非常に楽しみです。

未来を選択する。

負荷をかけずにというのは自然だけではなく、人にも言えることです。今はたくさんの選択肢がある中で、覚悟さえあれば自分の望む生き方を選択することが出来る。そんな中で、私たちには何をすべきでしょうか。選択肢が広がり、情報が多くなるほど、自分たちの生き方と向き合い続けなければ、判断するのは難しくなります。どんな暮らしがしたくて、今の社会はどうゆう状況なのか。自分で選択するということは、そこに対して責任を持つということでもあるため、見たまま聞いたままを受け入れるだけではなく、知る努力や真剣に考えることが必要。それはこれから先、人として作り手として、とても重要な行為だと思います。

㈱ALPH-DESIGN 
三原宏樹㈱ALPH-DESIGN 
三原宏樹
1954 年生まれ、佐賀県出身。
1988 年株式会社アルフデザインを設立。
NPO 法人さが環境推進センター代表理事。
NPO 法人まちづくり研究所代表理事。